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第80回 中小企業の節税

今回は、中小企業の税金対策で有名なものをいくつか紹介させていただきます。

 

少額減価償却資産の特例を利用する

これは法人でも個人事業者でも利用できる特例です。

個人でも法人でも、青色申告の承認を受けていることが要件となります。

 

固定資産を購入して事業に使用する場合、

本来は購入額の全額を一度に経費にすることはできません。

 

固定資産とは、会社で1年以上にわたって保有あるいは使用される資産のことで

土地や建物、機械装置や車輌運搬具、器具備品、投資有価証券や長期前払費用などがあります。

棚卸資産は販売目的なので1年以上保有していたとしても固定資産ではありません。

 

そのうち、減価償却資産と呼ばれれるものは

建物・建物附属設備・構築物・車輌運搬具・機械装置・工具・器具備品・生物

といったものがあります。

また、ソフトウェア、特許権、工業所有権などの無形固定資産も減価償却資産です。

 

これらについては、10万円未満のものについては

取得した事業年度に経費にすることができますが

10万円以上になると減価償却という手続きをとって複数年にわたって

経費化しなくてはなりません。

 

この少額減価償却資産の特例は取得価額が30万円未満のものであれば

取得した事業年度で全額を経費にすることができる制度です。

 

ただし、注意点がいくつかあります。

1.常時使用する従業員の人数が500人以下であること

2.その事業年度(個人事業主の場合はその年)の取得額の合計が300万円を超えていないこと

3.償却資産税は課税されること

4.経費化のタイミングが早まるだけであること

 

特に経費化のタイミングが早まるだけ、というのは要注意です。

減価償却資産は、いずれその全額を経費にすることができます。

この特例を使っても使わなくても長い目で見たら同じということです。

 

しかし、法人税も所得税も利益が大きくなれば税率が変わってきます。

今期だけ特別に利益が発生してしまい、どうしても通常年度の税率よりも

税率が高くなってしまう場合には経費化できる金額は同じでも

トータルで見れば節税になる可能性はあります。

 

今期だけ節税したい場合は検討の余地が大きいと思います。

 

 

小規模企業共済に加入する

小規模企業共済の概要

小規模企業共済とは、小規模な事業を営んでいる事業者が

自分の退職金を自分で積み立てる制度です。

 

廃業したときや役員を退任した場合などに

積み立てた金額に応じた退職金を受け取ることができます。

 

 

掛金について

掛金は毎月1,000円から70,000円まで500円刻みで自由に設定できます。

一度設定したら変更できないわけではなく、加入後に増額や減額も

自由にすることができます。

 

支払方については毎月支払いこともできますし、

半年払いや年払いすることもできます。

前納をすると一定割合の前納減額金を受け取れます。

 

 

掛金の税法上の取り扱い

毎月の掛金は所得税を計算する上で

その全額を課税対象となる所得から控除することができます。

 

個人の所得税は税率が5~45%まであるので

もし仮に税率が30%の方であれば、その年に支払った掛金の30%分だけ

所得税が減額されます。

 

住民税は10%なので、その年に支払った掛金の10%分だけ

住民税が減額されます。

 

自分のお金をためながら節税ができるということで

小規模事業者には人気の節税方法です。

 

 

共済金について

支払った掛金は請求をすることによって受け取ることができるのですが

それを共済金といいます。

そして、契約者の立場(個人事業主か法人役員か、共同経営者か)や請求する事由によって

その共済金の種類が異なります。

 

共済金の種類によって受け取ることができる金額も

異なりますので、十分に検討したうえで加入しましょう。

 

詳しくは中小機構HPを見ていただきたいのですが

事業を廃止したり、会社の役員をやめたりした場合は共済金を受け取ることができます。

 

受け取り方も一括で受け取る場合、分割で受け取る場合、併用する場合があります。

共済金を受け取る前に亡くなってしまった場合は、遺族が受け取ることとなります。

 

 

共済金の税務

共済金を受け取る場合は、所得税等がかかります。

ただし、退職所得とか公的年金等の雑所得扱いになるので

トータルで見たら節税になっていることが多いです。

 

 

注意点

廃業するまで掛け金を払い続けるので

今期だけ節税したいという方には不向きです。

 

任意のタイミングで解約をする場合には元本割れしてしまう可能性があり

また、その場合には一時所得になってしまうので、

節税できた以上の所得税がかかる可能性が考えられます。

 

 

前払いで家賃や保険料を支払う

個人事業主の場合、今年は2023年ですが、2024年分の

保険料や家賃を支払っても通常であれば経費にすることはできません。

 

法人も同様に、当事業年度に来期の期間に対応する経費を払っても

損金になるのは来期になってからです。

 

しかし、経費の中には支払日から1年以内にサービスの提供を受けるもの

について、支払った期の費用にすることができるものがあります。

 

この特例を「短期前払費用の特例」といいます。

 

具体的には、地代家賃、リース料、サーバー費用、会費などがあります。

また、法人の場合には生命保険料も短期前払費用の特例を受けることができます。

 

これらの費用を毎月支払ってきている場合に、

決算月に1年分をまとめて払うことができれば、約2年分の経費が

費用として計上することができるというわけです。

 

ただ、私たちは積極的にはお勧めしていません。

 

先ほどの説明通り、最初の1年は2年分を経費にすることができますが

2年目以降は1年分しか払うことができません。

 

なお、この特例は翌年以降も継続して適用しなくてはならないので

毎年1年分を前払いする必要があります。

1年分の経費をまとめて支払うのは資金繰りが大変です。

 

どうしても今期だけ利益を減らしたいというときであれば

検討してもいいかもしれません。

 

 

ふるさと納税

厳密に言うと節税ではないですが、

税金をたくさん納めていればいるほど恩恵が大きく得られる制度です。

普段の税金が高いと思われる方には特にお勧めします。

 

個人が自分の好きな自治体に寄付をすることで、

所得税や住民税が控除される仕組みです。

 

限度額はご自身の所得金額の大きさによって異なりますが、

その限度額以内で寄付をした場合は、

寄付金から2,000円を控除した金額が税金から控除されます。

 

そして、その寄付金の3割以内に相当する返礼品がもらえます。

 

つまり、実質的な負担額は2,000円

その寄付金額の3割程度の返礼品をもらうことができるという制度です。

 

ただし、自分の限度額を超える寄付をしてしまった場合は

控除を受けることができなくなります。

 

その限度額ですが、個人事業者であれば事前にぴったり予測するのは難しいですが

法人の役員さん(所得が給与のみ)であれば、かなり高い精度で計算できます。

 

いろいろなふるさと納税のポータルサイトがありますので

あらかじめ限度額を計算しておきましょう。