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第93回 【社内メモ】当社における変動費と固定費の区別の仕方について【考え方】

概要

変動損益計算書では経費を変動費と固定費に分けることが必要です。

 

当社では、変動費は商品仕入と材料費と外注費のみとしています。

固定費は変動費以外のすべての経費です。

 

このようにものすごく簡単に変動費と固定費と区別するには理由があります。

それは「簡単に作成するため」「数字を厳しく見るため」です。

 

 

変動損益計算書の固変分解は難しい

私たちの月次決算書には、変動損益計算書が含まれています。

変動損益計算書は、通常の損益計算書を組み替えて作成します。

 

変動損益計算書では、経費を変動費と固定費に分けることが求められます。

これを固変分解と呼んでいます。

 

変動費とは、数量比例性のある経費です。

販売数量が増えれば増えるほど増える経費です。

仕入や外注費が該当します。

 

固定費とは、売上や販売数量に関係なく一定の期間で発生する経費のことです。

人件費、地代家賃、リース料などがイメージしやすいでしょうか。

 

 

変動費は、商品仕入・材料仕入・外注費の3項目のみ

変動費と固定費の定義はなんとなく分かっていただけましたでしょうか。

しかし、具体的にはどう分けたらいいんだろう?と思われるかもしれません。

 

なかなか悩ましい問題です。

 

そこで、私たちは変動費を

・商品仕入高

・材料仕入高

・外注費

の3つだけとして、その他の経費はすべて固定費とすることとしました。

 

これなら損益計算書を見て、数字を拾い集計するだけですから簡単です。

 

 

理論的な正しさよりも経営に役立つかどうか

勘定科目だけで判断するなんておかしい!と思われるかもしれません。

3つの経費以外にも変動費(っぽいもの)はたくさんあるはずです。

 

例えば・・・

・製造業で機械装置を動かすための電気代

・繁忙期に残業した場合の残業手当

・売上アップのために支出されている広告宣伝費

 

などなど。他にもいろいろなものが該当すると考えられます。

 

しかし、こんなに無造作に分けてしまうのには理由があります。

ひとつめの理由は、毎月確認するものなので、簡単でなくてはならない、ということです。

 

月次決算書は、前月のものをなるべく早くお客様に届けなければなりません。

難しい分け方をしているとその分時間がかかってしまいます。

 

 

*ちなみに、残業手当は販売数量に比例するのではなく、残業時間に比例しているだけですし

広告宣伝費も売上に比例しているわけではありません(因果関係が逆)ので、明確に固定費です。

 

 

もう一つの理由は、経営数字を厳しく見ることができる、ということです。

厳しく見る?どういうこと?ということで、少し詳しく説明します。

 

 

もし、電気代を変動費に含めたら?

仮に変動損益計算書を作成するときに、電気代の固変分解に迷ったとします。

電気代を変動費にした場合と、固定費にした場合とで比較してみます。

 

こんな会社があったとします。

売上高 1,000

変動費   500

固定費   350

電気代   100

経常利益   50

 

これで計算してみましょう。

 

 

電気代を変動費に含めた場合の変動損益計算書

電気代を変動費に含めると、上記の変動損益計算書は以下の通りになります。

売上高 1,000

変動費   600

粗利益   400(粗利益率40%)

固定費   350

経常利益   50

 

 

電気代を固定費とした場合の変動損益計算書

電気代を固定費に含めると、上記の変動損益計算書は以下の通りになります。

売上高 1,000

変動費   500

粗利益   500(粗利益率50%)

固定費   450

経常利益   50

 

当然のことですが、売上高と経常利益はいずれも同じ金額になります。

違っているのは、変動費と固定費

それから粗利益の金額です。

 

 

粗利益率が変わってくる

まず、何が変わるかというと粗利益です。

粗利益率とは、売上高に占める粗利益の割合です。

 

電気代を変動費にした場合、変動費が600になり粗利益額は400です。

粗利益率は、粗利益額400÷売上高1000=40%となります。

 

一方、電気代を固定費とした場合、変動費は500ですから粗利益額は500になります。

粗利益率は。粗利益額500÷売上高1000=50%ですね。

 

 

【結論】

固変分解を厳密にしたら、粗利益率が低くなる。

変動費を3つに限定すれば、粗利益率は高くなる。

 

 

損益分岐点が変わってくる

固定費や粗利益率が変わってくるということで、次に思いつくのが損益分岐点です。

これはどう変化するでしょうか?

 

損益分岐点とは、損益が0になるときの売上高です。

固定費が粗利益と一致すれば、利益が0円になります。

 

ですから、固定費を粗利益率で割れば損益分岐点を計算できます。

 

 

電気代を変動費に含めた場合

固定費350÷粗利益率40%=875

 

電気代を固定費に含めた場合

固定費450÷粗利益率50%=900

 

このように、粗利益率と固定費によって損益分岐点が変わってくるのです。

どちらが正しいのか?というのも非常に大切だとは思います。

 

しかし、目標としてどちらがふさわしいのかという観点から考えてみて下さい。

経営者は経費は多めに見積もるでしょうし、売上は少なめに見積もることが多いと思います。

 

損益分岐点についても、より高い水準をデッドラインと考えたいと思われるのではないでしょうか。

 

【結論】

変動費を厳密に計算すると、損益分岐点は低くなる(達成が容易になる)

変動費を3つに絞ると、損益分岐点は高くなる

 

 

損益分岐点比率が変わってくる

損益分岐点比率についても計算してみます。

損益分岐点比率は、収益性の指標です。

 

これは、固定費を粗利益で割ることによって計算します。

低ければ低いほど、収益性が高いと判断できます。

 

電気代を変動費に含めた場合

固定費350÷粗利益400=87.5%

 

電気代を固定費に含めた場合

固定費450÷粗利益500=90%

 

損益分岐点比率も固変分解のやり方によって変わってきます。

変動費に含めたほうが数字が小さくなりました。

 

 

数字が小さい方が「収益性が高い」と判断されます。

ということは、電気代は固定費に含めたほうが損益分岐点比率は高く計算され

より厳しく会社の収益性を見ることができるということです。

 

 

以上、固変分解に迷うような経費は固定費に入れておけば

厳しい数字になることが分かっていただけるかと思います。