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第33回 中小企業の社長が決算書で見るべき数字とその目安③【総資本経常利益率】

社長が見るべき数字③

 

最後のひとつは「総資本経常利益率」です。

 

算式は

総資産経常利益率経常利益÷資産

となっています。

 

損益計算書に記載されている経常利益を、貸借対照表に記載されている総資産の金額で割って算出します。

 

会社の持っている資産を活用して、どれくらい利益を上げているかを示す指標です。

この数字が大きければ大きいほど、会社の持っている資産を有効に使って利益が稼げていることが言えます。

 

中小企業は持たざる経営をするべきだといつも申し上げていますが、総資産を圧縮することで算式の分母が小さくなり、総資本経常利益率は高まります。

 

金融機関から融資を受けて設備投資をした場合には会社の総資産は増えますが、それに見合った利益が出ているかどうかは、この比率を見ればわかります。

設備投資をしたの総資産経常利益率が、設備投資をするの利益率よりも数値が下がってしまった場合、設備投資によって増加した資産に見合った利益が稼げていないことになります。

 

会社は利益を出すために資金調達をして、利益を出すために設備投資をします。その設備投資はしっかりと利益が出せるでしょうか?

持たざる経営をするために設備投資をしないというのは間違っています。

設備投資をするのであれば、それに見合った利益をちゃんと出せているかをチェックしましょうということです。

 

 

*これも確認しましょう。

④売上債権

会社が膨張していないかどうかを確認するための判断材料の一つに「売上債権の増加」があります。

大口の取引先と契約ができ、売上増が期待されることもあるでしょう。

損益計算書だけを見ればいいという考え方では資金繰りに悪い影響を与えます。

売上高が増えた分だけ売上債権が増えるのであれば問題ないでしょう。

 

*増えた分だけというのは割合のことで、前期に比べて10%売上高が増加したのに売上債権残高が20%増えましたということであれば、利益が売上債権に吸収されている可能性があります。

 

これは、前期と当期の貸借対照表売上債権(売掛金・受取手形等)の金額の増加割合と、損益計算書の売上高の増加割合を計算することによって比較できます。

 

締日が毎月末日で入金が翌月ではなく翌々月であるとか、売上の翌月に現金ではなく手形で代金を受け取るとか。そんな時は、売上債権は売上の増加以上に増加してしまいます。

 

よく「結局、○月後には入金されるから大丈夫」と言われる方がいますが、実際にはその代金は「永久に入金されない」のが正しいです。

入金されるのは自社が解散したときか、そのお客様との取引が終わったときです。

それまではずっと未回収の状態が続くんです。

 

新しいお客様と取引を始めるとき、収益性はとても大切です。でも同じぐらい資金繰りも大切です。

一度決まった条件を変更するのは大変ですから、最初の入金条件の交渉は社長本人が明確な基準をもって取り組んでいきましょう。