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第32回 中小企業の社長が決算書で見るべき数字とその目安②【自己資本比率】

中小企業では法人税や消費税の申告をするために決算書を作成します。

 

その決算書には様々な情報が記載されていますが、多くの社長様は「いくら儲かったか」という損益計算書しか見ていないように感じます。

 

ひょっとしたら全く見ていない方もおられるかもしれません。

 

ただ、会社を長く運営していくにあたって、いくら儲かったかだけではなく、会社の財政状態がどのようになっているのか?安全なのか?ということを知るたことができる貸借対照表を見るのはとても大事なことだと思います。

 

損益計算書だけしか見ない方も、ぜひ貸借対照表を見ていただきたいと思います。

 

今回は「自己資本比率」をご紹介します。

自己資本比率はものすごく有名な指標なのでご存知の方も多いかもしれないです。

 

この指標は、会社の安全性を示していると言われています。

高ければ高いほど、会社の安全性は高いというわけです。

 

算式は

自己資本比率(%)=純資産÷総資産

となっています。

 

これらは貸借対照表に記載されていますので計算もしやすいと思います。

総資産とは会社の持っている資産の金額を合計したものです。

「資産の部合計」などと記載されています。

 

純資産とは、先ほどの総資産の金額から負債の金額を引いた金額です。

会社の財産は1億円あるけど、借金は6000万円あるという場合、

純資産は1億円-6000万円=4000万円となります。

 

純資産が多ければ多いほど、負債の金額は小さいということになります。

ですから、自己資本比率が高いということは会社はつぶれにくい、つまり安全性が高いということになるんです。

 

自己資本比率の目安と目標

まずは自己資本比率30%を目指しませんかとお伝えしています。

これを達成すると、毎月の返済がかなり楽になってくるからです。

 

そして、それを達成すると次は60%を目指していきましょうと提案しています。

60%まで来ると無借金、あるいは実質無借金の状態になっていると思います。

*実質無借金とは、現金預金の残高が、借入金の合計額を上回っている状態であるとわが社では定義づけています。

 

自己資本比率を高めると、会社の安全性が高まって安心して会社運営ができるようになりますので、ぜひこの数字を気にしてみてください。

 

 

この数字を良くするためには

①純資産を増やす

中小企業が純資産を増やすためには、増資をするか利益を出すかだと思います。

増資をするのはなかなか難しいので、現実的には利益を出していくこととなります。

 

ところが中小企業の社長様は、利益を出すのが嫌いな方が結構な割合でいらっしゃいます。

これは、決算書を読むことをせず、税理士事務所から渡される法人税の納付書の金額しか見ていないためではないでしょうか。

 

利益には法人税がかかります。

その税金を減らすために利益を出さないようにするのです。

しかし、税金を払わないと利益は蓄積されませんから会社の安全性は高くなりません。

それどころか会社規模が大きくなればなるほど安全性は低くなってしまうことになります。

 

利益が出ないように経費を使うので利益が蓄積されず、

いざ会社の業績が悪くなり赤字が出てしまうと、お金が足りなくなって金融機関から融資を受けます。

そして、借入金の返済には利益が必要ですが、その利益を出したくないので借入金が返済できません。返済するとお金が無くなるのでまた借入をします。

その繰り返しで借入金がどんどん大きくなってしまって、ちょっとやそっとの利益では返せなくなってしまうのです。

 

ひとりで運営されている会社であればそれも構いません。

ただ、実際には一生懸命に働いてくれている社員さんがいることと思います。その社員さんに安心して働いてもらうためにも安全な会社にしていっていただきたいですし、そのために利益を出し続けるという決定をしていただきたいと思っています。

 

今後、日本の労働人口はどんどん減少していくことが予測されています。

実際そうなると思います。

お客様だけでなく、働いてくれる社員さんも企業間で争奪されることとなっていくことは間違いないでしょう。

そういった状況におきましては、労働条件ももちろんですが、社員さんを大切にする会社が生き残っていくことができるでしょうし、そうでないと生き残っていくことができなくなってしまうのではないでしょうか。

 

そういった理由からも、利益を蓄積していくことを大切にしてください。

自己資本比率の目標を定めたら、それに対して必要な利益額を達成できるような計画を立てて毎月チェックしていくようにしてはいかがでしょうか。

貸借対照表は一朝一夕では改善されませんので、長い期間をかけて少しずつ良くしていく計画です。

 

 

②総資産を減らす

分子である純資産を増やすことはこのご時世大変難しいかもしれません。

それならば分母である総資産を減らすことが有効です。

 

売上高を増やす計画を立てていると、総資産は膨らみます。

設備投資が必要な事業では、固定資産が増えていきます。

在庫を抱える事業では、棚卸資産が増えていきます。

現金商売でない事業では、売上債権も増えていきます。

必要な手元資金が増えるので、借入をすることになるかもしれません。

 

そういったものがなるべく増えないように工夫できないでしょうか?

全く増やさないというのは難しいかもしれませんが、「仕方ない」と思っていたらどんどん増えてしまいます。

 

また、貸借対照表を眺めてみて、不要なものはないか確認してみましょう。

意外なものがあるかもしれませんよ。