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経営コラム

経営が苦しいとき、絶対に削ってはいけない支出とは|倉敷市・玉島の中小企業応援ブログ 

2025.05.09 | 月次決算書

倉敷市玉島で事業を営まれているみなさまの中にも、昨今の物価高や人件費の上昇、売上の鈍化などで、経営に不安を感じている方が多いのではないでしょうか。

経営環境が厳しさを増すなかで、売上が減少したり、利益が悪化したりする場面に直面することは、どの会社でも避けられません。
そんなとき、経営者として最も自然な反応は「できる限り費用を削減しよう」という考え方でしょう。

しかし、費用を見直す際に絶対に削ってはいけないものがあります。
それが、「未来費用」です。

今回は、私たち税理士法人エイコーが地元企業を支援する中で強く感じている「未来費用」の重要性について、未来費用とは何か、なぜ削ってはいけないのか、そして経営判断にどう活かすべきかを分かりやすくお伝えします。

 


未来費用とは?

未来費用とは、会社の将来の成長に向けた支出のことを指します。
具体的には、次のような費用が未来費用になるのではないでしょうか。

  • 広告宣伝費(地元のお客さまに自社を知ってもらう)
  • 採用活動費(次世代を担う社員の確保)
  • 教育研修費(社員の成長=会社の成長)
  • 商品開発・市場調査費(新たな価値の創出)

これらはすべて、「今すぐに効果が出るわけではない」が、「将来の売上や利益を生み出すために必要な支出」ですよね。

ちなみに、財務会計上では「未来費用」という勘定科目は存在しません。
通常の損益計算書(P/L)では、販管費のなかに埋もれています。
変動損益計算書(変動P/L)では、費用は「変動費」と「固定費」の二つに分かれ、未来費用は固定費の一部に含まれます。

 


なぜ未来費用を守らなければならないのか

売上が落ち込み、利益が悪化しているとき、費用を削るのは当然の判断です。
しかし、未来費用だけは別物だと考えなければなりません。

なぜなら、未来費用は「種まき」だからです。
いま未来費用を削るということは、将来の収穫をあきらめることにほかなりません。

・広告費を削れば、新しいお客さまとの出会いが減ります。

・採用費を削れば、未来をつくる人材が入ってきません。

・教育費を削れば、社員の成長が止まり、組織が硬直化します。

短期的には経費が減って利益率が上がったように見えるかもしれません。
しかし、中長期的には確実に会社の体力を奪っていくことになります。

経営とは「未来をつくる仕事」です。
未来費用を削る経営は、未来を捨てる経営と同じだといえるでしょう。

私たちが地元玉島で支援してきた中でも、未来費用を守った会社は、景気が回復したときに一気に成長しています。
逆に、目の前の利益ばかりに目を向けて未来費用を削ってしまった会社は、数年後に苦境に立たされることが少なくありません。

だからこそ、どんなに厳しい状況でも、「未来費用だけは守る」という覚悟が、経営者の胆力なのです。

 


削るべきは未来費用ではなく「無駄な固定費」

では、厳しいときに削るべき費用とは何でしょうか?

それは、未来に直結しない無駄な固定費です。

たとえば、

  • 使われていないオフィススペースの家賃
  • 過剰な福利厚生費
  • 必要以上に高い役員報酬
  • 効率の悪い外注コスト
  • 名ばかりの役職に対する高額な手当
  • 惰性で続けているサービスや会費

こうした費用は、未来への投資とは無関係な支出です。
まずはこちらを見直し、最小化していくべきです。

もちろん、家賃や人件費などは急には変えられないこともあります。
それでも、できる限り無駄を見つけ、固定費の中身を精査し続ける努力が必要です。

重要なのは、「未来費用」と「そうでない費用」を明確に区別すること。
一括りに「経費削減だ!」と叫んで、未来費用まで削ってしまっては、元も子もありません。

 


未来費用を削らない会社に未来は来る

本当に優れた経営者は、どんなに厳しい局面でも、未来への投資をやめません。
それどころか、逆風の中でこそ、積極的に未来費用を投入する会社もあります。

たとえば、不況時にも広告を打ち続けた企業は、景気回復後に一気にシェアを拡大することがよくあります。
採用を続けた会社は、景気回復時に即戦力の人材が揃っており、競合を一気に引き離します。

未来に向けた「種まき」を続けることが、未来の実りを手にするためには欠かせないのです。

私たち税理士法人エイコーも、地元・玉島を中心に数多くの経営者さまと向き合ってきました。
そして、未来費用を大切にし続けた会社が、数年後に確実に花を咲かせている姿を何度も見てきました。

「種をまかない会社に未来はない」のです。

 


まとめ

経営が厳しいときほど、未来費用の大切さが問われます。

もちろん、無駄な固定費は見直すべきです。
しかし、未来費用だけはどんなに苦しくても削ってはいけません。

未来費用は、会社の未来を支える命綱です。
いま蒔いた種が、数年後に大きな果実となって返ってくるのです。

厳しい状況下でも、未来への投資を絶やさない。
そんな覚悟を持った会社こそが、次の時代を切り開いていける、そう考えています。

倉敷・玉島という地域で事業を営む中小企業にとって、「何を削り、何を残すか」は非常に重要な経営判断です。
だからこそ、「未来費用だけは守る」という視点を持っていただきたいと思います。

未来費用は、単なるコストではなく「会社の未来をつくる投資」。
あなたの会社が、5年後、10年後も地域で輝き続けるために、ぜひ今日の経営判断に役立ててください。