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経営コラム

賃上げの原資は『値上げ』です!中小企業が社員の給与を上げる現実的な方法

2025.08.22 | 月次決算書

賃上げの原資は「値上げ」です

最近、物価上昇のニュースを耳にしない日はありません。

社員から「生活費が苦しくなった」「買い物をしても以前より高くつく」といった声が聞こえてくる経営者の方も多いのではないでしょうか。

また、採用活動の場で「給与が低いから」と辞退された経験を持つ社長もおられるかもしれません。

社員の生活を守るため、新しい人材を確保するために賃上げをしたい・・・

でも、どうやって賃上げの原資を確保すればいいのか-。

これは多くの中小企業経営者を悩ませる共通のテーマではないでしょうか。


賃上げの原資は粗利益

結論から申し上げると、社員の給与を上げるための原資は「値上げ」によって確保するしかありません。

なぜなら、人件費を増やすためには「粗利益」を増やす必要があり、その方法は次の3つしかないからです。

1.値上げをする

2.販売数量を増やす

3.変動費を下げる

どれも理論上は可能ですが、現実的に考えると「値上げ」が最も即効性のある手段です。


なぜ「賃上げ」には「値上げ」なのか

なぜ賃上げをするためには値上げをしなくてはならないのか。

それは、値上げしか方法がないからです。他の方法について考えてみましょう。

販売数量を増やすのは時間がかかります。

もし同じ人員で販売数量を増やすのであれば、社員の負担は増大します。

結果として「忙しいのに給与が上がらない」と不満が募り、逆に離職のリスクが高まることすらあります。

時間単価で考えれば、むしろ社員にとってはマイナスになる可能性もあるのです。

変動費についてはどうでしょうか。

材料費や外注費といった変動費は、物価上昇の影響で下がるどころか上がる一方です。

特に昨今は仕入価格や光熱費などの上昇が続いており、「変動費を削減して賃上げ原資に充てる」という発想は現実的ではありませんよね。

したがって、今すぐ賃上げを実現したいなら「値上げ」しか選択肢はありません。


賃上げのための値上げは顧客離れを招くのか?

多くの経営者が、値上げをすると顧客離れを起こすのでは?と心配します。

確かに、ただ単に価格を上げるだけでは顧客は離れていくでしょう。

しかし、実際には値上げをきっかけに「適正価格」として評価を受けたり、「品質やサービスに対する信頼」がむしろ高まるケースも少なくありません。

値上げは単なる価格改定ではなく、価値の再定義発信の機会でもあります。

経営者には「値上げ=悪」という固定観念を捨て、価格と価値を正しく一致させる姿勢が求められます。


数字で見る値上げの力・賃上げの原資

具体的にどのくらいの効果があるのか、数字で見てみましょう。

例1:年商1億円・粗利率30%の会社の場合

→ 粗利は3,000万円。

もし価格を1%アップすることができれば粗利益は100万円増加します。

粗利益額の増加割合は約3.3%です。

社員5人の会社であれば、一人あたり年間20万円の人件費が準備できます。

例2:年商5億円・粗利率25%の会社の場合

→ 粗利は1億2500万円。

価格を1%改善できれば500万円の原資が生まれます。

粗利益の金額は4%アップします。

社員10人なら、一人あたり年間50万円を人件費に回せる計算です。

このように「販売価格1%の改善」は決して小さな数字ではありません。

むしろ、中小企業にとっては十分に意味のある成果となります。


未来会計図表で値上げの効果を見える化する

こうしたシミュレーションに有効なのが、私たちの提供している「未来会計図表」です。

売上から変動費を引いて「粗利益」を出し、そこから固定費を引いて最終的な利益を導き出す仕組みです。

この形式で自社の数字を整理すると、

・どれだけ粗利益があり

・どのくらい人件費に回せるのか

が一目でわかります。

「まずは自社の変動損益計算書を作成し、価格を1%改善するために何ができるかを考える」

ここから賃上げの具体的な道筋が見えてくるのです。


経営者の使命は「社員に報いること」

私たちは、中小企業の経営目的のひとつは「社員に報いること」だと考えています。

社員の努力に対して賃金という形で応えるのは、経営者としての重要な使命です。

もちろん、固定費が増えることへの不安は理解できます。

しかし、そこで立ち止まってしまっては、優秀な人材は会社に残ってくれません。

長期的に見れば「賃上げを実現できない会社」こそが最大のリスクを抱えることになるのではないでしょうか。


私たちの想い

私たち税理士法人エイコーは、単なる節税や短期的な利益追求ではなく「社員を大切にする経営」をしてもらいたいと考えています。

賃上げの原資をどう作るか――答えは一社ごとに異なります。

だからこそ、数字を一緒に見つめ、最適な道を探す伴走者でありたいと考えています。

社員の未来をつくる経営をめざす社長と、価値観を共有しながら共に歩んでいけたら嬉しいです。